familybusiness’s diary

家族で貿易商社を営む日々のあれこれ

我が家の蟻塚②

蟻塚をめぐる我が家の戦いの話の続きです。

読書会で出会ったことをきっかけに結婚したこともあり、"読書夫婦"を自称している我々ですが、ここ最近はかなりお恥ずかしい読書量であり、蟻塚まみれの日々を贈っている。

読書夫婦の名前に恥じない読書量を取り戻すために、「本を贈る」という書籍の刊行記念イベントに参加してみました。

編集・装丁・校正・印刷・製本・取次・書店と、1冊の本が読者の手元に届くまでの各過程に携わる職業人によるエッセイ集。大阪の書店で開催されたイベントの参加者は14人ほどで、恐らく1/3ほどが出版業界の方と身内の方であった。場違いにも結構マニアックなイベントに参加してしまった。

ゲストは本の製作に関わった編集者・装丁家・製本家の皆さん。いち消費者(読者)としては、本はついつい作家個人の作品だと思ってしまうけれど、1冊の本が世に出るまでには実に多くの人が関わる。例えば装丁家は表紙のデザインを考えるだけではなく、本のサイズから使用する紙まで、総合的なディレクションを行う。そしてデザインが決定した本を大量生産ラインの乗せる工程である印刷・製本は、素人では絶対に真似できないような職人芸の世界だったりする。

一番印象に残ったのは、この本を製本するときに製本所の担当女史の判断で本の外装の背表紙部分に使う紙だけを0.1mm薄くした・・というエピソード。そうすることによって、紙の吸湿による本の反りを最小限に出来るとの判断だったそう。きっとそんなことに気づく読者(消費者)は世界で一人もいないのだろうけど、そんな誰も気づかないような職人芸の集積が日本の出版文化のレベルの高さを支えているのだ。

本は、書き手から読者への"手紙"という詩的な側面もあれば、大量生産の工業製品という側面もあるという珍しい商品である。そして、消費者の手元に届くまでにこんなに多くの工程を挟む商品も他に無いだろう。

出版不況と言われるようになって久しい。確かに1,500円でパジャマが買える時代に1,500円の本は高いかもしれない。けれど出版不況の波の中、出版業界の誰も知らないところで輝く職人芸が絶滅してしまうことは日本人にとっても大きな損失だろう。

出版印刷業界の隅っこで生きるビジネスマンとして、そしていち読者として、この文化を陰ながら支えていかなきゃなと感じた。

 

f:id:familybusiness:20181031233354p:plain