familybusiness’s diary

家族で貿易商社を営む日々のあれこれ/オンライン読書会はじめました

ウッタラ・バンクの謎

家族で貿易業を営む我々は、海外の銀行とやりとりをする機会が結構多い。貿易の世界では「早く商品をよこせ!」「いや、金が先だ!」・・といった西部劇みたいな(?)シチュエーションになることがよくあるので、そういうときは銀行に間に入ってもらって取引を仲介してもらうのです。

うちの会社で一番やりとりをする機会が多いのは、バングラデシュにある「ウッタラ・バンク ナワブプール支店」という、この仕事をやっていなければ一生聞くことがなかったであろう銀行である。

ウッタラ・バンクは困った銀行だ。時には何百万円という取引を完了させるために必要な書類のやりとりをするのだが、ウッタラバンクは銀行の癖にかなりの高確率で初歩的なスペルミスをしたり、金額の桁を間違えてきたりする。銀行にミスをされると後々すごく面倒なことになるので、ウッタラバンクから書類が来たら必死にチェックをしている。普通逆じゃないのか。。

"銀行"とか"通関"とか"郵便"とか、日本の感覚だと絶対しっかりしてるであろう機関が往往にして頼りないのは発展途中の国と取引をする際の悩みどころなのだろうか。いつか現地に行く機会があれば担当者に嫌味の一つでも言ってやりたいのだけど、機会あるかな。。

f:id:familybusiness:20180914223607p:plain

夏の思い出②

夏の思い出。その2。

3歳児と一つ屋根の下で仕事をする・・というだけでも大変だったのだけど、もう一つ大変なことがあった。姪っ子氏は"トイトレ完遂"のミッションを背負って日本に帰ってきたのだ。姪っ子氏は中東某国に帰ったらすぐに幼稚園入園を控えており、それまでにトイレに行けるようにならないと入園に支障が出るかもしれない・・という結構切羽詰まった状況でもあった。

なので姪っ子氏は日中はオムツを外してトレパン(通称お姉ちゃんパンツ)で過ごす日々だった。トイトレ中の幼児は時限爆弾のようなもので家族全員、常に注意していなければならない。姪っ子氏がもじもじしたり、おしっこ~と言い出したら直ちに姪っ子氏を抱えておまるにダッシュする・・というスリリングな日々であった。

試行錯誤の末に辿り着いたのは「自己啓発本作戦」。義妹が図書館やメルカリで沢山のトイトレ系の絵本や紙芝居(通称自己啓発本)を準備して、それを読み聞かせることで苦手意識を減らす作戦だ。意外にも喜んで読んでくれたり、時には自分で紙芝居をやりたがったりと、少しづつトイレへの抵抗が無くなっていったようだ。

そしてもう一つ上手く行った?のが「後輩作戦」。

ステラちゃんという赤ちゃん人形(通称後輩)を我々夫婦から姪っ子氏にプレゼントして、まだオムツが取れないステラちゃんの教育を姪っ子にさせるという作戦だ。丁度人のお世話を焼きたい願望が芽生えてきたタイミングだったのか、熱心(?)にお世話をしてくれたのだが・・・、

「みーちゃーん、ステラちゃんのオシメ替えてあげてー」

「ああもう!!!!もーおしっこばっかりしてー!!!」

「・・・・しらない!!」

「えっ」

「みーちゃんもうしらなーい!!!!!」ダダダダダ・・・(走り去る音)

大人達が薦めすぎたせいか、ヒステリックに育児放棄をするようになった。。。自分自身のトイトレを客観視することでトイトレ完遂に繋げる成長のプロセスだったと信じよう。。。

f:id:familybusiness:20180911230425p:plain

夏の思い出①

中東某国で暮らす姪っ子&義妹氏が帰省していたので、交代で姪っ子の子守をしながら家業を営む夏でした。

学生時代保育園でアルバイトしていた私は無駄に子供の相手が得意で、姪っ子氏は大いに懐いてくれた。嬉しい反面、3歳児のパワハラに手を焼く日々であった。子供の居る暮らしは想像以上に大変だったけど、赤ちゃんと幼児と女子のあいだを彷徨うようにしながら日々成長する姪っ子氏の姿はとても面白く学ぶことも多かった。

*我々の夏の暮らしの一幕

姪っ子氏のマイブームは"おどり"。中東の音楽を流しながらベリーダンスの振り付けのマネをするというものだ。一人で踊ってくれたらいいのだけど、何故かおどりをするときは私を呼びに来る。

「じゅーん!!踊りしよ!」

「ちょっと仕事が、、」

「ねーえーおどりー!!」

「ちょっと待って。。ねっ」

「おーどーりー(怒)!!!!!」

「お仕事だから。。ちょっと一人で遊んでてね。」

「おぉぉーどぉぉおーりいぃぃぃ(怒)!!!!!」

仕事にならん(°_°)

 

姪っ子氏は幼児らしく、NHKの教育番組とかが大好きである。何か観たくなると私のiphoneを目当てに寄ってくる。

「ねーえー!ぽけっとなーす見せてー!」

「??」

「ぴよっとたんぷだよお!!」

「???」

「ぴよっとたんぷ!!!ぽけっとなーす!!!」

「??????」

「もういいよ(怒)!!」

後に"ピタゴラスイッチ"のことだったと判明した。分かるかっ!

 

衣装へのこだわりも芽生えてきたようだ。3歳児でも女子は女子なんだなぁと感心するのだけど、"おどり"をする際にくるっと回ったときにスカートがふわっとする・・というのが"可愛い服"の定義らしい。

「ねーえー!この服いやー!!」

くるくる回る

「ふわっとしない!!ほらー!!!」

くるくる回り続ける

「ほーらー!!ふわっとしないじゃーん!!!」

ドレスかワンピースを着せるまで、くるくる回りながら不具合を訴える姪っ子氏であった。

f:id:familybusiness:20180905194606p:plain

 

狩猟と農耕

お仕事の話。

うちの会社には事業の柱が2つある。一つが中古印刷機の輸出、もう一つが印刷業に関係する各種消耗品(インクとか)の輸出である。この2つの商売は、仕事の性格が大きく異なる。

中古機ビジネスは基本的に売り手優位の商売。中古の印刷機はモノによっては新台の10分の1くらいの価格で販売されるので、アジア・東南アジアの伸び盛りの国々では中古の機械はまさに引く手あまたである。1台の機械に10件以上購入希望が殺到することも珍しくない。そのため、日本国内では熾烈な中古機の取り合いが起こる。なのでこの商売はいかに良い情報を素早くゲットして、質の良い中古機を適正な価格で仕入れられるか、ということが重要になってくる。商売の難点としては、一期一会の商品を扱うのでビジネスをルーチン化できないのと、(中古なのでしょうがないけど)トラブルが結構多いことだろうか。色々と苦労は多いのだけど、一度決まると数百万円くらいの売上になる。そして、大抵の場合納品と同時にお金が入ってくるので、キャッシュフロー的な利点も大きい。

もう一つの消耗品事業は、売り手優位のビジネスとは言い難い。日本製の印刷資材は品質は抜群に良いのだけど、価格では中国製品にとても敵わない。なのでアレコレ説明したり資料を作ったりサンプルを送ったりして品質の良さを理解してもらう必要がある。

導入に至るまでは苦労が多いのだけど、ストックビジネスなので一回ハマると定期的に注文が来ることが最大の利点である。但し、消耗品の支払いサイトは長いのが業界的な通例であり、売上が発生してから3ヶ月、6ヶ月とお金が入ってこないことだってある。加えて一回あたりの注文は大きいとは言い難い。数十万程度の売上げを十、二十とコツコツ束ねて大きな売上げにしていくような商売である。

喩えるなら中古機ビジネスは狩猟的な商売で、消耗品ビジネスは農耕的なビジネスである。それぞれに良さがあるのでどちらが優れているとは言えないけど、消耗品6割、中古機4割くらいの割合が一番会社が安定するのかなぁとは思う。

これまでは妻が農耕的ビジネス、義父が狩猟的ビジネスを担当していたのだけど、将来的なことを考えて私は両方を勉強している最中です。同じ業界とは言え必要なスキルやビジネスの進め方が全く違うので、ある程度切り分けて理解しないといけない気がしている。

f:id:familybusiness:20180827223258p:plain

展示会の風景⑥

展示会編、最終回です。

記事にするまでもなかった諸々の雑感たち。

展示会の場では、「期待の新製品!」「憧れのテクノロジー!」と大手各社が大々的に新商品をPRするのだけど、実はオフセット印刷機というのは構造的にはここ20年くらいあんまり進化していない。単純な印刷スピードアップや、クラウドを使った業務の集中管理・画像認識技術の高度化によるチェック機能の改善など、根本的な技術革新を伴わない改良が主なトピックである。中古機を扱っている我々からしたら、これは大きな追い風である。5年前のiphoneなんて使う気がしないだろうけど、下手したら私より年上の中古機械がバリバリ現役で海外に売れていくのはそういう事情もある。そう考えると中古機ビジネスというのは、低成長の時代にマッチしたビジネスなのかなぁなんて思う。

展示会ウィークは昼間の仕事も大事だけど、夜の部もすごく大事である。大事なバイヤーは前半に来る傾向にあり、日にちも限られているので誰と食事に行くか、よくよく作戦を立てて食事に誘わないといけない。場合によっては2部制にする、ランチに回すなどして調整する。下見1件、ご接待3件、他に兄貴に会いに行ったりと、夜も予定満載であった。ベトナムのお客さんに寿司屋でしこたま飲まされ、珍しく酔っ払った私でした。。

今回の展示会の言い出しっぺである台湾のTさんはものすごくアグレッシブな方である。英語力は私と同じくらいのはずなのに、どこの国のお客さんが来ても机をバンバン叩きながら超アグレッシブに話をする。決断もアクションも早く、彼に渡した資料が翌日には中国語に翻訳された立派なパンフレットに仕上がっていた。

聞くところによるとTさんは、私と同じく婿入り的な立場でこの業界に入ったそうだ。私も仕事を頑張ってたらいつかTさんみたいになれるかしら・・と希望を持とう。Tさんは台湾に帰国したその日に今度はマレーシアの展示会に飛ぶそうだ。あの火の玉のような経営者について行くのは大変だろうな・・とTさんの社員達にちょっと同情するけれど。

6日間にわたるIGASの終了のアナウンスが鳴るのと同時に、設営会社の人達が撤去作業をしに忙しそうに入ってきた。一つの仕事が終わると同時に次の仕事が始まり、それがずっと続いて行く。世界はそうやって回っていくのかなあ・・と、展示会に来るとなんだかセンチメンタルになってしまう私でした。

f:id:familybusiness:20180822230953p:plain

展示会の風景⑤

展示会の機能とは、第一にビジネスマッチング、第二に顔繋ぎ。そして忘れてはいけない第三の機能があるとすれば、"同窓会"だろう。

ここ30年くらいの間で貿易の世界のビジネスのやり方は目覚ましい変化を遂げた訳だけど、展示会のスタイルだけはほとんど進化していない。そしてその間に起こった数々のイノベーションによって、ひと昔前に比べると展示会の価値は大きく毀損された。IGASは依然アジア最大の展示会ではあるけれど、その昔の開催規模は今の2倍。コミケみたいにビッグサイトの東西両館を貸し切る規模だったそうだ。

展示会の価値を大きく揺るがした大きな変化とは、第一にアリババに代表されるビジネスマッチングサイトの登場。第二は通信手段の格段の進歩である。

ビジネスマッチングサイトとは、売り手・買い手をオンラインで繋ぐサービスである。この普及によって今では展示会などに行かずともどの国のどんな商品でも仕入れることが可能になった。勿論、会ったことのない異国の業者と取引をするのには相応のリスクや不便が伴う。けれど通信手段の格段の進歩は実際に会わずとも濃密なコミュニケーションを取ることを可能にした。我々も一度も会ったことがない海外のお客さんが大勢いるけれど、昔に比べて格段に安価になった国際電話や、LINEなどのメッセンジャーアプリ、ビデオチャットなどを利用することで問題なくビジネスを進めることが出来ている。

さて、こんな便利な時代に高額な費用と時間をかけて展示会に赴く意味とは何か?それはきっと、展示会における"同窓会"機能は意外にも重要な役目を果たしているからだろう。

今回の展示会では、国内外問わずに昔からの馴染みのお客さんにも多く会うことが出来た。中には今では取引の少ないお客さんや、数年間取引がストップしているお客さんも大勢居る。

何度も言うけれど激動の印刷業界である。(側面を見れば、斜陽産業とも言える)この業界では、数年ぶりに会ってお互い無事で再会できたことだけでも大いに喜ばしいことなのだ。そんなお客さん達とは「あれ売れたよね~いい時代だったよね~」という同窓会的な昔話に花が咲く。

そんな昔話に混じって、ビジネスマッチングサイトでは絶対に手に入らないような濃密な情報が交換される。「最近どこと付き合ってるの?やめとけって、あそこは資金繰りヤバイらしいぞ・・」「最近中古のエレベーターに手を出そうかなって思ってんだよね・・」

世界を相手に貿易を行うというと果てしなく大きな市場を相手に商売をするようなイメージがあるかもしれないけれど、意外にもこの界隈は驚くほどに狭い業界である。いやそうではなく、この巨大なマーケットを深く理解している経験豊富なOld player達が惜しげも無く情報を交換する"同窓会"があってこそ、この業界を狭い業界だと認知できるのだろう。これは物凄く大きなアドバンテージである。

目先のビジネスは一旦置いといて、お互いに無事を確認できた喜びと共に昔話を交わす展示会の風景。そんな同窓会がもたらす意外にも重要なアドバンテージは、古参だけが享受できる特権として激動の印刷業界において相互扶助の作用を果たしているのだろう。

 

f:id:familybusiness:20180820215311p:plain

展示会の風景④

この展示会における我々の大きなテーマは"次世代"

70を迎えた義父を中心に家族で貿易商社を営む我々ですが、あと何回、義父と一緒にIGASに参加できるのだろうか。義父があまりに元気なので忘れがちだけど、近い将来の世代交代についてはそろそろ真剣に考えなければならない。

そんなことを親身に考えてくれて、この機会を設けてくれた台湾のTさんには感謝しかない。国内・海外を問わずに大勢のパートナーが集まる展示会の場は、次世代をにらんだ顔つなぎの場としても大きな意味のある機会であった。

次世代勢としては、我々夫婦だけでなくTさんのご令嬢・ご子息も今回の展示会には応援に駆けつけた。Tさんのご令嬢は実は日本で働いているのだけど、なんとこのためにがっつり仕事を休んで参加したとのこと。(いつかの私みたいだ・・)

そして新世代勢の最先端としては、3歳の姪っ子氏も今回展示会デビューである。姪っ子のために刷った特注名刺も大活躍。大ハリキリで色んな国の人に名刺を配っていた。仕事=カードを交換すること、だと承知した様子であった。親や親戚が仕事をしている様子を見ることが出来たり、時には子供がそれに参加したりすることが出来るのはファミリービジネスにおける大きな役得のある。

姪っ子氏が大人になった時に今回の経験を覚えているかどうかは分からないけど、オーナーシップメント溢れる家業的な生き方のフィロソフィーを継承してくれる機会になったらいいなと思う。

f:id:familybusiness:20180817223156p:plain