familybusiness’s diary

家族で貿易商社を営む日々のあれこれ/オンライン読書会はじめました

展示会の風景⑤

展示会の機能とは、第一にビジネスマッチング、第二に顔繋ぎ。そして忘れてはいけない第三の機能があるとすれば、"同窓会"だろう。

ここ30年くらいの間で貿易の世界のビジネスのやり方は目覚ましい変化を遂げた訳だけど、展示会のスタイルだけはほとんど進化していない。そしてその間に起こった数々のイノベーションによって、ひと昔前に比べると展示会の価値は大きく毀損された。IGASは依然アジア最大の展示会ではあるけれど、その昔の開催規模は今の2倍。コミケみたいにビッグサイトの東西両館を貸し切る規模だったそうだ。

展示会の価値を大きく揺るがした大きな変化とは、第一にアリババに代表されるビジネスマッチングサイトの登場。第二は通信手段の格段の進歩である。

ビジネスマッチングサイトとは、売り手・買い手をオンラインで繋ぐサービスである。この普及によって今では展示会などに行かずともどの国のどんな商品でも仕入れることが可能になった。勿論、会ったことのない異国の業者と取引をするのには相応のリスクや不便が伴う。けれど通信手段の格段の進歩は実際に会わずとも濃密なコミュニケーションを取ることを可能にした。我々も一度も会ったことがない海外のお客さんが大勢いるけれど、昔に比べて格段に安価になった国際電話や、LINEなどのメッセンジャーアプリ、ビデオチャットなどを利用することで問題なくビジネスを進めることが出来ている。

さて、こんな便利な時代に高額な費用と時間をかけて展示会に赴く意味とは何か?それはきっと、展示会における"同窓会"機能は意外にも重要な役目を果たしているからだろう。

今回の展示会では、国内外問わずに昔からの馴染みのお客さんにも多く会うことが出来た。中には今では取引の少ないお客さんや、数年間取引がストップしているお客さんも大勢居る。

何度も言うけれど激動の印刷業界である。(側面を見れば、斜陽産業とも言える)この業界では、数年ぶりに会ってお互い無事で再会できたことだけでも大いに喜ばしいことなのだ。そんなお客さん達とは「あれ売れたよね~いい時代だったよね~」という同窓会的な昔話に花が咲く。

そんな昔話に混じって、ビジネスマッチングサイトでは絶対に手に入らないような濃密な情報が交換される。「最近どこと付き合ってるの?やめとけって、あそこは資金繰りヤバイらしいぞ・・」「最近中古のエレベーターに手を出そうかなって思ってんだよね・・」

世界を相手に貿易を行うというと果てしなく大きな市場を相手に商売をするようなイメージがあるかもしれないけれど、意外にもこの界隈は驚くほどに狭い業界である。いやそうではなく、この巨大なマーケットを深く理解している経験豊富なOld player達が惜しげも無く情報を交換する"同窓会"があってこそ、この業界を狭い業界だと認知できるのだろう。これは物凄く大きなアドバンテージである。

目先のビジネスは一旦置いといて、お互いに無事を確認できた喜びと共に昔話を交わす展示会の風景。そんな同窓会がもたらす意外にも重要なアドバンテージは、古参だけが享受できる特権として激動の印刷業界において相互扶助の作用を果たしているのだろう。

 

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