familybusiness’s diary

家族で貿易商社を営む日々のあれこれ/オンライン読書会はじめました

雑記:トムとジェリー展

雑記です。ずっと楽しみにしていたトムとジェリー展が大阪に来たので行ってきた。トムとジェリー展というよりはハンナ・バーベラプロダクション全般について扱う展示会であり、カートゥーンネットワークを見て育った私としては大満足の展示会であった。

アイルランド系アメリカ人のウィリアム・ハンナとイタリア系アメリカ人ジョセフ・バーベラの二人の出会いによって誕生した「トムとジェリー」は、当時ディズニー一色であったアニメ業界においてアカデミー賞を7回受賞するという快挙を果たす。トムとジェリーのヒットの背景には、戦争が本格化するにつれ、ハッキリした物語が好まれるようになったという事情もあるらしい。

「トムとジェリー」という作品単体よりも私が興味があるのは、親会社であるMGM(メトロ・ゴールドウィンメイヤー)スタジオがアニメ業界からの撤退を決め、ハンナ・バーベラの二人が一方的に解雇された後の物語である。ハンナ・バーベラはMGMから独立する形でプロダクションを立ち上げたものの、予算もなければ「トムとジェリー」の版権も無い、ブームが過ぎたアニメ映画にはもはや観客は集まらない・・という逆風の状況であった。

そこで彼らが目をつけたのが、テレビ×アニメーションという新しい市場。アニメーションを制作するのに現代の何倍も人手と時間がかかっていた時代、テレビ放映の予算とスケジュールでアニメを制作するのは無理だと考えられていた。ディズニーですら当時は非常に限定的な形でしかテレビのアニメ放送は実現できていなかった。

そこで彼らはスケジュールと予算を劇的に削減し、アニメを週次放送できる制作手法、リミテッド・アニメーションを発明した。(*1)血のにじむようなコスト削減の努力がされたにも関わらず、60年代、70年代に制作されたハンナ・バーベラの作品群は今でも色あせないハイセンス・ハイクオリティである。

日本では「チキチキマシンの猛レース」と「フリント・ストーン」あたりが知られているくらいだろうけど、日本ではマイナーな作品群も素晴らしいです。(画像から素晴らしいクリエイティビティとハイセンスが伝わるでしょうか)

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キャラクターのキャッチーさだけでなく、スピード感のあるボケとツッコミや、ハイセンスなパロディ、大人もドキっとするような当時のアメリカ社会を皮肉るような演出はディズニーには真似できないものだろう。

ワーナーが映像配信サービスを始めるというニュースもあるので、膨大な作品群をいつか自由に観れる日が来るのかなと密かに期待している。(*2)

 

(*1)ちなみに、日本でテレビ×リミテッドアニメーションという手法を実現したのはご存じ虫プロ(手塚治虫)です。国産初のテレビアニメ"鉄腕アトム"はハンナバーベラから遅れること4年の1963年から4年間放映。虫プロは"ディズニーを"日本に輸入したという文脈で語られることが多く、ハンナ・バーベラの影響については語られないことが多い気がする。(ハンナ・バーベラの影響力が"低俗だから"という理由で軽視されているのであれば残念だなぁ。)

 

(*2)ハンナバーベラプロダクションは、紆余曲折を経て2001年以降はワーナーメディアの傘下です。事実関係がややこしいので以下にざっくりまとめます。

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