familybusiness’s diary

家族で貿易商社を営む日々のあれこれ/オンライン読書会はじめました

警戒心を持って働くこと②

しばらく滞りました。年末らしい忙しさがじわじわと押し寄せて来た。。

ビジネス上の詐欺から身を守るよう、警戒心を持って働くこと。大企業のサラリーマンとして働いた10年間ではあんまり身につかなかった能力だけど、今の仕事ではすごく重要な能力だった・・という話の続きです。

 

私が日常的に遭遇する詐欺あれこれ。

 

スパムメール

実害は小さいのだけど頻度は圧倒的に多い。99%のスパムメールは見てすぐに分かるのだけど、思わず返信しそうになってしまう"名作"が届いてしまうことが数ヶ月に1回くらいある。世界中の不特定多数の顧客を相手にしているうちの会社は特に、迷惑メールにひっかかる可能性も決して低くはないので油断は出来ないなぁと思う。

ちなみに私が入社する前、うちの会社の人達は迷惑メールをフィルタリングするという技術がなかった為に膨大な量のスパムメールの中から仕事に必要なメールを掘り出しながら働いておられた。。(遠い目)

 

サンプルどろぼう

お宅の会社の商品に興味があるからサンプルを送ってくれ-!と言われ、いざ送ったら連絡がつかなくなるパターン。送ったサンプルは転売してお小遣いにでもしているのだろうか。詐欺かどうかのチェックに時間をかけすぎて新しいビジネスが停滞するのも問題だし、そもそも詐欺目的かどうかを判別するのが不可能に近いので防御が難しい。被害額といっても少額なので、ある程度必要経費として割り切るしかないか・・と半ば諦めている。

 

ビジネスビザ取得詐欺

貿易界にはよくある古典的な詐欺。日本へのビザ(渡航許可)を取得しようと思ったら、日本での渡航保証人による一筆(招待状、インビテーションレターとか言います)が必要になる国も多い。そのため、架空のビジネスの用事をでっち上げて日本の人に招待状を作らせる・・という詐欺が横行している。スパムメールなんかと違って向こうも真剣に騙そうとしてくるので注意が必要。これに引っ掛かったら日本に不法滞在外国人を増やすことになるし、犯罪の片棒を担いだとして最悪一緒にお縄になったりするのだろうか。商談が不自然にトントン拍子に進むときは特に要注意。

 

商品どろぼうorお金どろぼう

現地に商品を送ったのにお金を払わず逃げられた。前金が必要と言われ振り込んだら逃げられた・・という詐欺。貿易をやるなら一番注意しなきゃいけない詐欺だろう。頻度も多いし被害もストレートに大きい。ネットの普及以降、顔の見えない取引が圧倒的に増えたので防御の難易度も上がっている気がする。要注意ワードは"政府ご用達案件"。詐欺師が好んで使う表現らしい。そして決して悪気はないのだけど、中国、インド、ナイジェリアが絡む案件は無意識に警戒レベルが上がってしまう。

社歴が長かったり、業界内に付き合いの多い会社はこういった詐取の心配が少ないだけ安心と言える。(社歴の長い会社にとってはメリットよりデメリットの方が圧倒的に大きい。少なくとも顧客を1件確実に失うことになるし、意外に狭い業界なので悪い噂は一気に広まる。)

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警戒心を持って働くこと①

少し話題が古いですが、積水ハウスの地面師詐欺事件に注目しています。

住宅大手の大企業、積水ハウスが地面師という土地専門の詐欺グループに欺され63億円もの被害を出してしまった・・という驚愕の事件です。63億円って、、うちの会社の何年分の売上だよー!

事件の成り行きは報道の通りなのですが、私が注目しているのはこの事件、事前にいくらでも防ぎようがあったらしい・・、ということです。

例えば取引を行った不動産ディーラーの住所が架空の住所であること、地権者になりすました女性がご本人とは似ても似つかずパスポートも全くの偽造であること・・などはいくらでも確認手段はあっただろう。けれど積水ハウスは事実関係の裏を取るどころか、本物の地権者から何度も警告があったのに無視、さらには顧問弁護士の忠告も無視して巨額の振り込みを強引に成立させてしまっている。もう内部に裏切者がいるんじゃないかと疑ってしまうくらい杜撰なリスク管理である。

この事件の原因の一つに、この取引が積水ハウス社内において早期の段階で"社長承認案件"になってしまったことが挙げられるそうだ。社長のお墨付きの案件はなんとしても成立させなければいけないプレッシャーが社内に強く働く。そのせいで取引のチェック機能がマヒしてしまった・・ということだ。元サラリーマンとしては、この気持ちはよく分かる。

もう一つ私が想像するのは、大企業相手にそんな大袈裟な詐欺を行う人なんてまさかいないだろう・・という油断があったのではないだろうか、ということ。大きな企業だと一つの取引に実に多くの人間が関わる。営業部門だけでも担当、直属の上司、そのまた上司と何人もの人がチェックを行うし、経理や法務の専門部署も関わる。そんな厳重なセキュリティ体制の会社に詐欺を働こうと思う人はまずいない。思えば私もサラリーマン時代、まさかこの業界に詐欺を行う人なんているはずがない!という感覚で仕事をしていた。ルートセールスだったので積水ハウスとは事情が違うが、前の会社が詐欺に遭ったなんて話は聞いたことも無かったし、想像したこともなかった。

騙そうとしてくる人に鈍感になってしまうというのは、致命的な大企業病かもしれない。前の仕事と今の仕事の大きな違いの一つに、詐欺からは自分で身を守らないといけない(誰を信用するかしないか、自分で判断しなければならない)ということがある。大企業では見えてなかった景色だけれど、世の中にはこちらを騙そうとしてくる人など別に珍しくもない。

何度も言うけどfamilybusinessを営むうちの会社には4人しか人がいない。小さな会社だけに、もし詐欺に遭ったらその被害は全て自分達で被ることになる。取引相手が本当に信頼出来る人なのかどうか・・というのを見極めるのにはまさに生活がかかってくるのだ。それが出来なければ、私は家業をこなすことが出来ないだろうと感じている。続きます。

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ジタバタすればキャパは広がる②

最近のジタバタ話、その2。

facebook経由でインドのお客さんからコンタクトがあった。彼のかなりぎこちない英語を解読するに、とある機械の特殊な部品(正確には部品の部品)を探しているとのことだ。

調べてみるとうちの取り扱いラインには無かったので、残念ながらうちが取り扱っている商品ではないことをお伝えした・・・のだが、インド系のビジネスマンはそんなことでは諦めない。カタコトの英語でyokohamaという都市のxxという会社の@@という担当者が扱っているかもしれないから聞いてみてくれー!とを主張してくる。そこまで分かってるなら自分で聞けばいいじゃないか・・と思いつつ半信半疑のまま教えてもらった会社にコンタクトをしてみると、意外にもスムーズに目当ての部品を仕入れることが出来た。お客さんが仕入れルートまでアレンジしてくれるというのは中々珍しい話である。少額の注文ではあったが仕入れ先・顧客ともに開拓でき一石二鳥の取引であった。たまには良いこともあるものだ。

・・と思っていたら、ここからが大変だった。いざ支払いの段になると、件のインド人がpaypalで送金をしたいと言ってくる。paypalとはクレジットカード決済も可能な電子送金システムなのだけど、うちの会社には未導入である。paypal決済は対応できないと何度説明してもインド人は諦めない。インドは銀行法の影響で銀行送金の手数料が高く経費倒れになってしまうという事情をカタコトの英語で情熱的に説明してくる。

結局、インド人に押し切られる形でpaypal導入を進めることになった。(paypalの送金手数料は5%程度と割安なので、少額の海外送金ならばお得になることは事実である)paypalの登録は案外簡単・・と思いきや、審査をパスするために各種身分証明書の提出に加え、会社の登記簿謄本を取りに法務局まで行かざるを得なかったり、内容証明の郵便物を待たなければならなかったりと結構面倒であった。かくして、先日のe-bayに続き、我が社にめでたくpaypalも導入である。少額の注文でも大事な売上なので、新システムのpaypal決済がまたどこかで役に立つと信じたい。

最近、チリと韓国以外全ての国に行ったことがあるというすごい貿易マンにお会いした。歴戦のビジネスマンが語る成功談や苦労話の数々は、とても同じ業種の方だとは思えないくらいスケールが大きく面白い。大先輩の彼も、私より遥かにスケールの大きい"ジタバタ"を繰り返し続けて今に至っているのかなぁ・・と想像する。いつか本物の貿易マンになれるよう、私もまだまだジタバタしなければ。

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ジタバタすればキャパは広がる

海外のお客さんより、「~の○○がどうしても欲しいんだけどなんとか手に入らないかー!」という依頼が舞い込むことがある。往々にしてこの手の案件は簡単に手に入る物ではなかったり、代理店の都合で簡単に流通出来ない事情があったりと、一筋縄ではいかない場合が多い。数多くの業者がギブアップした結果うちに回ってくるような案件も多い。

微笑ましいエピソードでは「ガラスの仮面の最終巻がどうしても欲しいんだけど・・!」と聞かれたことがある。(お気の毒ですが未完の作品です・・としか答えようがない。)

こういうイレギュラーな案件は取り組もうと思ったら大変だし面倒だし、難題を解決できない場合の方が多い。ただ、しつこく頼んでくる案件は確実に海の向こうで誰かが困っているということでもある。具体的な困り事が目の前にある案件は、それを解決してあげることさえ出来れば即売上に繋がるし、市場/顧客ともに開拓できるチャンスとも言える。

先日機械を買ってくれたお客さんから、その機械を動かすのにどうしても必要な部品を探している・・というお話を受けた。調べてみると市販されているものではなく、なおかつ結構古い部品でもありメーカー在庫も無いようだ。ただ、お客さんはその部品がどうしても必要なようで、何度も頼んでくる。正直そこまで助けてあげる義理もないといえばなかったのだけど、アフターサポートの一環として手伝ってあげることにした。安請け合いだったと後から後悔することになる冒険の始まりであった。

・目当ての部品を探すため、付き合いのある仕入れ業者に依頼するもNG。結局自力でネットで探す羽目になった。

Amazon×、、Alibaba×、、ヤフオク×、、全然見つからない。長い長いネットサーフィンの末、アメリカ版のe-bay(メルカリの元祖のようなオークションサイトです)でようやく目当ての商品を発見した。

・早速e-bayに登録し、アメリカから部品を調達しようとしたところ問題発生。出品者が海外への発送を受け付けていないのだ。こちらで配送を手配するのでなんとか売ってくれ~と交渉するも、先方の理解力の問題かこちらの言葉の問題か、交渉が遅々として進まない。

・弱りながら色々調べると、PlanetExpressというサービスを発見。小口配送専門の輸出代行業者で、登録料と簡単な手続きを済ませれば私専用のアメリカの住所(配送専用の住所)を作って日本への配送を代行してくれるとのことだ。ありがたいことに結構安い。

・急いでPlanetExpressの登録を済ませ、e-bayでの落札手続きは完了。カリフォルニアにある私のアメリカ住所に商品が届くのを待っているところです。(これ以上トラブルが起きませんように)

・・かくして私はe-bayの使い方を覚え、数日でアメリカの住所までゲットした。個人輸入業者デビューである。先の見えない道を進むような苦労はあったけれど、面倒事に飛び込むことで、少しづつキャパは広がっていくのだ。この経験がいつかまた役に立つと信じよう。

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時差問題と働き方

family businessを営むうちの会社には定時などという概念は無い。必要であれば深夜早朝でも働くし、仕事さえ片付いていれば世間的なワークタイムに働く必要はない。

元サラリーマンとしてはラッシュアワーの満員電車に乗らなくて済むのは大きな喜びだし気楽と言えば気楽な働き方なのだけど、健康を維持しながら働き続けるにはそれなりの自律心も必要である。貿易という仕事柄と日本の時差の条件のせいでワークスタイルが夜型に傾きがちになってしまうのだ。

最近は特にインド・ヨーロッパ・北米のお客さんとやりとりを交わす機会が多いのだけど、

日本 9時:インド530分、ドイツ深夜1時、アメリカ17

日本12時:インド830分、ドイツ深夜4時、アメリカ20

日本18時:インド1430分、ドイツ10時、アメリカ深夜2

・・という時差関係である。

午前中の時間帯、うちのお客さん達は早朝か終業後であり、海外から連絡が入ることはあまりない。逆に15時~24時あたりがお客さん達のワークタイムに一番被る時間帯である。

一日の仕事を終えて夕食を食べている時にせっかちなインド人から携帯にメッセージが入ることはしょっちゅうあるし、夜中にふとメールをチェックしたらアメリカからの嫌なメールが来ていて緊急対応せざるを得なかったこともある。お客さんとタイムリーにやりとりをしようとすれば夜型のほうが都合が良いのだ。

こういう事情もあって、最近は17時頃に一旦仕事を終えて、寝る前にまたちょっと仕事を片付けるという働き方になっている。時差に文句を言ってもしょうがないのだけど、1日の仕事を終え、夕食後のゆったりとした休息の時間・・というのが許されないのは個人経営貿易業者の宿命である。お客さんの都合に合わせているとどんどん宵っ張りの不健康な働き方になってしまうので、なんとか改善しないといけないのだけど。

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我が家の蟻塚②

蟻塚をめぐる我が家の戦いの話の続きです。

読書会で出会ったことをきっかけに結婚したこともあり、"読書夫婦"を自称している我々ですが、ここ最近はかなりお恥ずかしい読書量であり、蟻塚まみれの日々を贈っている。

読書夫婦の名前に恥じない読書量を取り戻すために、「本を贈る」という書籍の刊行記念イベントに参加してみました。

編集・装丁・校正・印刷・製本・取次・書店と、1冊の本が読者の手元に届くまでの各過程に携わる職業人によるエッセイ集。大阪の書店で開催されたイベントの参加者は14人ほどで、恐らく1/3ほどが出版業界の方と身内の方であった。場違いにも結構マニアックなイベントに参加してしまった。

ゲストは本の製作に関わった編集者・装丁家・製本家の皆さん。いち消費者(読者)としては、本はついつい作家個人の作品だと思ってしまうけれど、1冊の本が世に出るまでには実に多くの人が関わる。例えば装丁家は表紙のデザインを考えるだけではなく、本のサイズから使用する紙まで、総合的なディレクションを行う。そしてデザインが決定した本を大量生産ラインの乗せる工程である印刷・製本は、素人では絶対に真似できないような職人芸の世界だったりする。

一番印象に残ったのは、この本を製本するときに製本所の担当女史の判断で本の外装の背表紙部分に使う紙だけを0.1mm薄くした・・というエピソード。そうすることによって、紙の吸湿による本の反りを最小限に出来るとの判断だったそう。きっとそんなことに気づく読者(消費者)は世界で一人もいないのだろうけど、そんな誰も気づかないような職人芸の集積が日本の出版文化のレベルの高さを支えているのだ。

本は、書き手から読者への"手紙"という詩的な側面もあれば、大量生産の工業製品という側面もあるという珍しい商品である。そして、消費者の手元に届くまでにこんなに多くの工程を挟む商品も他に無いだろう。

出版不況と言われるようになって久しい。確かに1,500円でパジャマが買える時代に1,500円の本は高いかもしれない。けれど出版不況の波の中、出版業界の誰も知らないところで輝く職人芸が絶滅してしまうことは日本人にとっても大きな損失だろう。

出版印刷業界の隅っこで生きるビジネスマンとして、そしていち読者として、この文化を陰ながら支えていかなきゃなと感じた。

 

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横ドラが怖い話②

人生初の横ドラ、なんとか無事に生還しました。

同乗してくれたインドのお客さんは現地に巨大な倉庫と数十人の従業員を抱える大きな会社の経営者。20歳くらい歳上の方である。

新大阪駅からうちの事務所までお客さんと二人で1時間程のドライブ。直前まで事故って死ぬんじゃないかと本気で心配していたのだけど、いざ本番となると会話も運転も案外スムーズであった。私の語学が少しは成長したのか、それとも英語で話すしかない状況に追い込まれると言葉はなんとかなるものなのだろうか。

往き道はSさんの身の上話を聞かせてもらった。Sさんは元々、叔父が印刷工場を営んでいたことがこの道に入る契機になったそうだ。インドにはSさんのように親戚筋を巻き込んでゆるやかなコングロマリットを形成するという"大家族型"のファミリービジネスを営む方が結構多い。"核家族型"のファミリービジネスを営む我々としては参考になる話を沢山聞かせて頂いた。

もう一つ盛り上がった話題は日印の物価の違い。一番衝撃的だったのは、インドでの携帯電話の料金。電話かけ放題、4Gネットワーク使い放題で現地でのお値段は・・なんと250円!日本の携帯料金は高いという話は聞いたことはあるけど、衝撃的な価格差である。格安SIMなんかで喜んでいる場合でもない気がする。

帰り道は、互いの文化の違いについて突っ込んだ議論が出来た。お題は「ラブ・マリッジ(自由恋愛)の日本と、アレンジド・マリッジ(お見合い結婚)のインドはどちらが幸せか?」というもの。

インドでは75%がお見合い結婚。子供の結婚相手は親が決めるのが一般的だそうだ。最近はお見合いアプリなども普及しているらしいけど、もちろん使うのは親である。結婚前に婚約者と接触することはなく、結婚はぶっつけ本番。婚前の性交渉は文化的に厳しく禁止されている。

それで結婚生活が上手く行くのか不思議であるけど、Sさんの結婚生活は大変幸せそうである。子供の結婚に親・親戚・地域の人々・宗教的関係者の全員が関与して結婚生活を支援するので不幸になりようがない仕組みになっているとのことだ。毎朝早起きしてスパイスを挽いてカレーを作る奥様をは大変誇っていらっしゃった。

平成に生きる日本人の感覚としてはどうしても信じられないインドの結婚文化であるが、全部自由にしていいけど自分でなんとかして結婚相手を見つけてね。そしてどんな結果になっても自分で責任とってね。家族は手助けしないからね・・という日本の文化も日々沢山の不幸を生んでいる気がする。日本の結婚文化をかいつまんで説明すると、それこそ「信じられない!」という顔をされた。

無事にSさんを目的地に送り届け、無事に帰還。今度は一時的に日本語が不自由になる私であった。

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